鶴巻堂
作品を作る事自体が幸せです。なにせ、好き勝手に作つてゐますから。なので、そんな自分勝手の作品を、誉めて下さつたり、気に入つて下さる方と出会ひますと、ありがたいな、と思ひます。

三歳くらゐから紙と鉛筆があれば、何時間でも過ごせたものでした。とにかく暇と余白さへあれば何かを描いてゐました。その内に漠然と、将来は絵を描く人にならう、と思ふ様になりました。併し、それが画家なのか、デザイナーかイラストレーターか、漫画家、アニメーターなのか、そこは判りませんでした。以来、黙々と描き続け、近所にある雑貨屋の小さな小さなスペースを借りて 展示をしたのは、十八歳の頃でした。

とにかく、作る事が肝心だ、と思ひました。どこかへ売り込むにしても弟子入りするにしても、自分に作れるもの、自分がやりたい事を明確にしなければ、話を切り出す事も出来ません。何になりたいのか判らない私ですが、何を作りたいかは判るので、作れるだけ作らうと思つてをります。

2003年屋号「鶴巻堂」を掲げ、木版画の製作をはじめて、日本人なら誰でも一度は経験するであらう、凸版画です。木を彫り、絵具を乗せ、紙に写し取ります。絵具は透明水彩絵具を使つてゐます。水彩絵具には、透明と不透明があります。不透明だと、仕上がりがマットで、色を重ねたりすると、下になつた色は隠れて了ひます。透明水彩だと、色を重ねてもなんとなく下の色が透けて見えたり、紙の繊維が見えたりするので、私はそこが気に入つて使ひます。

版木はシナベニヤや桂を使つてゐます。樹種に依つて柔らかさが異なるので、作りたいものに合せて選びます。シナベニヤは比較的柔らかく、彫り易いので、勢いある画面にしたい時に適します。逆に、柔らかい故に脆いので、細かい彫りには向かない様です。桂はシナベニヤよりはずつと堅いので、小作品や文字を入れたい時に使つてゐます。紙は、和紙を使ひます。画材屋で求めたり、書道具屋で買つたり、文房具屋で買つたり、様々です。漂白された白よりは、未晒しの生成の色、わざと繊維を残したもの等を好んで使ひます。今のところ、以上の様な基準で画材を使つてをりますが、まだまだ勉強中です。ほぼ独学なので。

文学のためにわがままをするといふのは、いいことだ。社会的には二十円、三十円のわがまま、それをさへできず、いま更なんの文学ぞや太宰治『もの思ふ葦』より「わが儘といふ事「文学」を「美術」に置き換へて、反芻してゐます。どこかで修行した訣でもない、作品が売れてゐる訣でもない、こんな事で良いのか…と思ふ事がままあります。そんな時に上の文章を反芻します。美術に限つては、何の型にも嵌らずにやつてゆかう、売れなくとも賞賛されなくとも、自分が好いと思ふものをただ素直に作つてゆかう、それが「わがまま」だと解釈してゐます。

今のところ、描くモチーフは妖怪魑魅魍魎不思議生物を好んでいます。いろいろと意義やコンセプトを作品に持たせるよりは、目で見て美しい、おもしろい、と思つて戴けるものを描きたい、と考へてをります。その作品が目におもしろく映るか、美しいか、眼福となるか、画面の見た目に最 もこだはります。描くからには目で見ておもしろいのが一番だ、と私は考へます。

「心に残る和の年賀状 亥年版」インプレスジャパン
「本の手帳 創刊号」本の手帳社
「日本書票協会通信 No.135、No.137」日本書票協会
以上に作品掲載。
2007年2月 仙台蔵書票愛好会刊「蔵書票レッスン」発行。作品の提供と編集。
2007年6月 「蔵書票フェスタin仙台」開催。作品の展示と実行委員。
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